ラグビー日本代表 VS 南アフリカ がなぜ感動するのか【ラグビーワールドカップ、ブライトンの奇跡を語る】
皆様こんにちは。
ラグビーワールドカップ、日本代表の大躍進が話題になっていますね。
最近ネット上でよく【ルールはよく分からないけど感動する】というお茶の間のコメントを目にします。
わたしは何を隠そう、生まれてこのかたラグビーボールに触れた事すらないテンプレが服着て歩いている正真正銘のにわかラグビーファンなので、多くは語れませんが、全くもって同じ意見です。今回のワールドカップでかなりラグビーファンの裾野が広がったのではないでしょうか。
ところで、W杯で初の決勝トーナメントへ駒を進めるジャパンの快進撃をみると、前回大会での南アフリカとの死闘の記憶が蘇るのは私だけでしょうか?
ラグビー史上最大の番狂わせは何?と言われれば、この試合を挙げるファンも多いと思います。Google先生に【Rugby Upsets】と聞けば分かりますが、日本のラグビーファンだけでは無く、海外の反応も同様と言っても過言ではない、それだけ衝撃的な1戦でした。
因みにアメリカの大手メディア FOX SPORTSが選んだラグビーW杯史上最大の番狂わせランキングでは1位に選ばれています。
本当に?衝撃を受けているのは、喜んでいるのは日本だけじゃないの?いえ違います。アイルランドファンがウェールズの首都カーディフで日本対南アフリカ戦のラストワンプレーを観戦している様子をご覧ください。
Irish fans in Cardiff go crazy for Japanese win against South Africa
極東の日本なんか縁も所縁も無く、勝敗なんてアイルランドファンには関係ないのに、この熱気&歓喜の渦です。
その4年後に同じワールドカップの舞台で今度はアイルランドを相手にジャパンが番狂わせを演じるとはよもや想像だにしていないと思います。。
日本人だけでなく、世界のラグビーファンを熱狂させたあの1戦。なぜ、史上最大の番狂わせ、と称されるのか、当時よく分かっていませんでした。知っていたことは【ジャパンはまじで弱い】【南アフリカはむっちゃ強い】【ルールは分からんがとにかく熱い】【南アフリカにブタゴリラみたいな名前の選手がいる】程度でした。それだけの予備知識でもジャパンの勝利はものすごいことだと当時思い感動しましたが。。
なぜ世界中のラグビーファンの心をとらえたのか、感動を呼んだのか。その【ポイント】を知っている/知らないではあの1戦も、20日に行われるラグビー決勝トーナメント、南アフリカ戦での見方も変わってくると思います。
そんなわけで、最近ドラクエウォークにハマっているにわかラグビーファンですが、ジャパンVS南アフリカ戦の感動ポイントを少し深く掘り下げて書いていきたいと思います。純度100%のにわかなファンなので、薄っぺらいと思いますが、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
まずは、感動ポイントを語る前に前提について理解して頂ければと思います。
目次:
- 前提1:ラグビーは実力差が如実に出るスポーツ。
- 前提2:ジャパンはW杯で1勝しか挙げたことがなかった。
- 前提3:ティア1とティア2の戦力差は歴然。ティア1の中でもニュージーランド(オールブラックス)と南アフリカ(スプリングボクス)は別次元で強い。
- ポイント1:世界最強のチームを動揺させた!
- ポイント2:世界最強のチーム相手に勝ちにいった!
- ポイント3:ラストワンプレーでの逆転トライ!
前提1:ラグビーは実力差が如実に出るスポーツ。
ラグビーの最大の特徴と言えば前にパスが出せない。という点により、偶発的に点を取ることが非常に困難です。
ボールを運ぶための1つ1つのプロセスが得点/失点へ直結してしまう、ボールを落とす等のミスやファールが命取りな綱渡り状態の戦い方を強いられます。
攻守の入れ替えも激しく、サッカーで言えばオールコートの常時カウンターアタック状態で、アジリティやテクニックだけでは無く、スタミナやボディーコンタクト等肉体的強度も必要なってくる、ミスが少ない等、総合的な強さが必要になってきます。結果、前評判通りの結果になる事が多い、という番狂わせが少ないスポーツとの認識があります。
勝率にスポットを当ててみます。例えば、サッカーで調べてみると、W杯最多優勝5回数(単独トップ)を誇るブラジル代表の勝率は
通算成績
勝率63% 612勝197分154敗(2088得点868失点)
W杯通算成績
勝率 66% 73勝18分18敗(229得点105失点)
出典:ブラジル代表の試合結果・通算成績 | FIFAランキング.net
サッカーブラジル代表はめちゃくちゃ強い印象ですが、勝率は6割程度、また引き分けも多い事が分かると思います。2回に1回は引き分けるか負ける可能性がある。番狂わせもあり得るという可能性が数字からは読み取れます(勝率について御指摘頂き修正致しました)。
他方で最強との呼び声も高いラグビーニュージーランド代表(オールブラックス)の勝率を見てみましょう。NZ代表は熱狂的なファンも多く、公式HPもあります。なになに、、、
1903年から2017年までのテストマッチ566回で勝率77.21%を弾き出したオールブラックスは男子ラグビー史上最強の全国代表チームです。
出典:https://jp.allblacks.com/teams/all-blacks/
・・・おいおい、いきなり冒頭からものすごい数値をどや顔で誇示してきます。しかも史上最強って自称しちゃっています。勝率が8割近いって、ちょっと異常じゃないでしょうか。
試合成績の内訳を見てみると、引き分け数もブラジル代表と比較するとその少なさが顕著だと思います。
総試合数 | 勝ち | 引き分け | 負け | 勝率 |
588 | 455 | 21 | 112 | 77.38 |
つまり、強いチームは強い上に、引き分けが少ない。勝つか負けるかはっきりしている、番狂わせは多くは無い事は少しでも理解頂けると思います。
前提2:ジャパンはW杯で1勝しか挙げたことがなかった。
今までのジャパンのW杯は、とにかく予選全4戦中、2勝すること。これが最大の目標でした。目標というだけで、その2勝だって、ほんとに勝てるの?という皮算用な状態です。
2勝を挙げるため、今回で対戦したティア1(ラグビー上位国のカテゴリ)のアイルランドや、スコットランド等、強豪国相手との対戦は控え選手を出し、文字通り試合を捨てる作戦を選び、ティア2(中位国のカテゴリ)等なんとか勝てそうな試合に集中する。2勝を挙げれば、予選免除で次回W杯の自動出場権を得れるからです。
そんなプライドをも捨てた戦法でもW杯の対戦成績は2015年イングランド大会まで1勝21敗2分、1991年のジンバブエ相手のたった1勝だけ今まで散々な状態でした。
前提3:ティア1とティア2の戦力差は歴然。ティア1の中でもニュージーランド(オールブラックス)と南アフリカ(スプリングボクス)は別次元で強い。
国際大会でも成績を残しておらず、実力が劣るティア2に所属するチームが、ベスト8に進んだのは12年ぶり(07年大会のフィジー)、全勝で予選を突破したのは1987年から始まるW杯史上初のことだそうです。ジャパンはそのティア2に属しています。
ティア1/ティア2とは?
ティア1:神~上位国。強豪国(伝統国とも)
ティア2:中堅国
ティア1と2のW杯成績を見てわかるともいますが、過去のW杯での成績で大きく水をあけられています。
日本は今回の大会で初のベスト8進出&世界ランキングを7位まで上げており、ランキングで見れば、ティア1下位国と遜色が無いように見えます。
が、過去の国際大会や、テストマッチではティア1下位国でも善戦するが勝てない、死体蹴りのような大量得点で負ける、という塩試合を繰り返しています。というか、ジャパンはティア2でも上位国には結構負けていますし、順位では語れない程の壁がティア1と2にはあります。
ジャパンの対ティア1国との対戦成績を調べました。
日本協会が1930年9月から認定するキャップ対象試合で、日本代表はティア1(伝統上位国・地域)と呼ばれるアイルランドなどの強豪国とは90戦してここまで白星は6度しかない。勝率は約6・7%で、15年W杯以降は1勝1分け11敗。ジョセフHC就任後の16年11月以降は、1勝1分け9敗で、17年11月に敵地でW杯準優勝3度のフランスに23―23で引き分け、18年6月にホームで日本より世界ランクが低いイタリアに34〇17の1勝となっている。
なんと、長い歴史の中でたった6回しか勝てていません。今大会のアイルランド、スコットランド戦を含めると8回になりますが。。
勝利国でみると、
アイルランド:2019年今大会
ウェールズ:2013年
南アフリカ:2015年前大会(ブライトンの奇跡)
スコットランド:1989年と2019年今大会
アルゼンチン:2014年
イタリア:2014/2018年
と2010年代に入り、ぽつぽつ勝てるようになってきた。つまり近年までずーーーーーーと絶賛暗黒期中!であったことがお分かりいただけると思います。
補足ですが、ティア2以下のカテゴリもありますが、W杯出場国はこの2つのカテゴリを軸に争われます。
そんな上位カテゴリ、ティア1でも別次元の実力を持つ国、それが上述したNZ代表です。
ラグビーを知らない方でもオールブラックス、という言葉を知っている方も少なくは無いと思います。ハカとかね、カッコいいですよね(感想)。
過去W杯優勝3回を誇り、テストマッチで全ての対戦相手に勝ち越している唯一のチームです。これまでに行われた試合の約4分の3の試合に勝っており、その勝率はサッカーのブラジル代表を上回るという化け物チームです。
因みに1995年W杯では、NZは17-145というスコアでジャパンをギッタギッタのメッタメタの完膚なきまでにオーバーキルしています。145点て。。
そんな最強格のNZに後塵を拝していますが、めちゃくちゃ強い、と言われている国、それが南アフリカです。
W杯ではNZ代表に次ぐ2回優勝を誇り、オーストラリアと並んでいます。
そして、世界最強のオールブラックスとの対戦成績で唯一肉薄しているチームでもあります。
NZの対戦成績を見ると、勝率が唯一5分に近いのが、南アフリカで59.60%です。
ティア1のウェールズや先日対戦したアイルランドですらNZ代表に今まで歴史上たったの2回しか勝った事がありません。
じゃあ日本とNZや南アフリカとの対戦成績はさぞかし悲惨なスコアだろう、と思われるかもしれませんが、NZとは歴史上4戦しかしておらず(結果はお察し)、南アフリカとはなんと2015年でのW杯での対戦が初めてでした。つまり、弱すぎて対戦すらさせてもらえないような扱いだったというわけです。
因みにワールドカップでの南アフリカの勝率はどうなのでしょうか?
大会の勝率88%で、3連覇&4回目の優勝を狙う「オールブラックス」こと、ニュージーランド代表と、同勝率83%で過去2回の優勝を誇る「スプリングボクス」こと、南アフリカ代表が、ワールドカップで初めて予選プールで対戦する。
出典:ニュージーランドvs.南アフリカ、優勝候補が激突する予選プール最大の戦い。ラグビーワールドカップ | ラグビーのコラム | J SPORTSコラム&ニュース
なんと、W杯での勝率は8割を超えています。。NZは90%近くどの相手と対戦しても【ほぼ負けない】と言っても過言ではないでしょう。正直異状です。
ラグビーというスポーツは番狂わせが少なく、またティア1の国でもNZと南アフリカは別格で有る事はお分かりいただけたと思います。その前提を元に、当時の試合を振り返ってみたいと思います。
ポイント1:世界最強のチームを動揺させた!
ジャパンは南アフリカに突き放されても追いつく、シーソーゲームの展開を演じていました。後半で自力の差が出てくるのですが、当時はジャパンは集中しており、頼もしく、【これもしかして勝てるんじゃ・・】なんて雰囲気すらありました。この時点で既にあり得ない状況です。
そして後半28分、五郎丸選手のトライ&コンバージョン(5点+2点)で南アフリカに29対29と追いつき、まじかよ!波乱が起こるのでは!?というあり得ない状況になりました。この時点で泣いているラグビーファンもいたと思います。
しかし、その期待は32分に打ち砕かれます。ジャパンは手痛いペナルティーを犯してしまいます。残り時間は7分を切っていました。これを決められると逆転するのは厳しい時間です。ましてや相手はラスボスの南アフリカです。正直終わった、と思いました。
ここで、南アフリカが選んだのは、トライ(5点)を目指すのではなく、安牌のショット、つまりペナルティーゴール(3点)を選びました。
常勝軍団にしてみれば、戦略的にゲームを運ぶ選択は当然のことかもしれません。しかし、圧倒的な戦力差があると思われていた南アフリカの安牌な選択はスタジアムに詰めかけたファンから大ブーイングを受けます。なぜ、強者らしく振舞わないのか?と言わんばかりです。
素人的観点ですが、南アフリカはかなり動揺していたと思います。楽に勝てると思っていた相手が終盤まで食い下がってきたのですから。
もし、トライを選択していれば、ボールをキープしてそもそものジャパンの反撃も潰せたかもしれません。以降プレーの流れも、ファンの声援もジャパンへ風向きが大きく変わりました。
ポイント2:世界最強のチーム相手に勝ちにいった!
29対32、南アフリカ3点リード。対するジャパンは1トライで逆転できる僅かな差です。ロスタイムまで残り1分を残したところで、南アフリカはジャパンのモールを中心とした波状攻撃にしびれを切らし、ペナルティ(意図的との見方が強い)を受けます。
“お前ら引き分けもできるんだぞ”
といわんばかりの選択肢をジャパンへ与えたように見えました。そしてプレーが切れている間にロスタイムに入りました。もう、ラストワンプレーです。
ペナルティーゴール(サッカーで言うPKみたいなもの)を選べば3点を得て同点に追いつけます。また残り時間を考えるとそのままノーサイド、引き分けも視野に入るはずです。距離的にも五郎丸選手ならペナルティーゴールを決められたと思います。
ティア1でも最強格の南アフリカと引き分ける事ができれば、グループリーグ突破に弾みもつくはずです。大健闘です。
しかし、ジャパンは、引き分けという選択肢を捨てました。
そして、正面から屈強な南アフリカFWとぶつかる、スクラムを組む、トライ(5点)を目指し勝ちに行く、という事を選びました。南アフリカは似たようなシチュエーションで安牌なショットを選び大ブーイングを受けました。
ジャパンは引き分けを捨てた、あの最強南アフリカに勝つ気でいるんだ!もうこのシーンは長きに渡る暗黒期を知るラグビーファンにとっては涙無くしては観れないでしょう!にわかファンの私でも、退路を断ち、困難な道を選んだジャパンの選択に感動しました。
過去のW杯でたった1度しか勝てず、ティア1のチームにボコボコにされていた弱小チームが、世界最強のチームにW杯という晴れ舞台でシーソーゲームを繰り広げ、終盤まで食らいつけた。
日本のラグビーの歴史を考えれば、号外が出るレベルだったでしょうし、世界のラグビーファンにとってもそれはもうナニコレコワイ、戦慄を覚える出来事であったはずです。
絶対的な実力と実績差、対格差、そして修羅場をくぐってきた経験値、ティア1の中でもラスボスのような存在の南アフリカとティア2のジャパンはあらゆる面で差がありました。
ティア2のジャパンがよく頑張ったよ。引き分けを選んだとしても責めはしない。そういう雰囲気だったはずです。
自ら退路を断ち、弱小チームが強大な敵に正面から立ち向かう、この漫画やドラマのような構図がファンの心を揺れ動かし、観客を味方につけジャパンコールが巻き起こりました。
ポイント3:ラストワンプレーでの逆転トライ!
ラグビーは40分ハーフ計80分、ロスタイムはプレーが切れたらノーサイド(フルタイム)、試合終了になります。
40分を過ぎてプレーが続いている場合は、得点、ペナルティ(スクラム/フリーキック)、ボールがタッチラインから外に出るなどによってプレーが止まると同時に笛が吹かれてノーサイドとなる
サッカーで言えばアディッショナルタイムとも言いますが、違う点と言えば、例えば3分間のロスタイムが有れば、3分経過後に、レフリーが流れを読みつつプレー切って試合終了になります。しかし、ラグビーは、ワンプレーが続く限りは試合終了にはなりません。
上述の通り、ジャパンは引き分けを捨て、勝つか負けるか、正面から南アフリカに立ち向かう事を選びました。
その決断から逆転トライまでずっとジャパンがずーーーーとミスすることなく、最強南アフリカからボールを奪われることなく攻め続けた、という事を意味します。
プレーが途切れてしまった時点でジャパンの負けが確定するというラストワンプレーの状態、ボールを奪われても負け、ジャパン側もミスしても負け、ファールをしても、、、という背水の陣で攻め続けました。いやもうこのシーンだけでボロボロと涙が出てきます。画面越しに、ジャパン頑張れ・・・頑張れ・・・と念じ声を掛けたのは人生で初めてでした。
そして最後は劇的な逆転トライでジャパンが勝利しました。こんな展開、素人でも尋常では無い事だということは理解できます。
ラグビーは前提でも述べた通り、攻防が連続して続きます。自軍で先ずパス回しをしてビルドアップして、、と緩急と時間を使うタイミングはペナルティーゴール(PG)やラインアウト、スクラムを組む等リスタート以外極めて少なく、兎に角相手陣地へボールを進めるため、前進し続けます。
相手チームからの当たりも激しさを増し接触プレーの連続で流血もあります。それでもジャパンの選手は倒れても立ち上がり、波状攻撃を続けました。
残り時間1分半でPGを選ばず、トライを目指した。そして、ロスタイム、ラストワンプレーで必死に繋いで、繋いだ結果のトライであったという奇跡のような熱いドラマがありました。
さいごに
南アフリカへの勝利はただ単に【強いチームに勝った】という一言では説明できない程、熱いドラマがありました。そして、日出ずる国、ジャパンが長い暗黒期から遂に日の目を見せるときがきた、そんな長年のラグビーファンに希望を与える試合だったのだと思います。そのドラマが今大会までずっと続いていると思います。
2019年10月20日、4年の時を経て、ジャパンは再度、W杯ベスト8という舞台で南アフリカと対戦します。恐らく、前回の敗戦で南アフリカは奢ることなくぶつかってくると思います。が、ジャパンなら何とかしてくれる、そう思います。
今度はどんなドラマが待ち受けているのか楽しみです。ラグビーを観たことが無い方もぜひご覧の上、応援してください。
追記:検討しましたが、3-26でジャパンは敗れました。。
感動を有難うございました! 5manyendekabu.hateblo.jp
ラグビーの基本事項について知りたい方は下のサイトが分かり易かったです。